あなたは膝の痛みを治そうと、人工膝関節置換術をしようか考えているでしょうか?
もしそうならば、ぜひこのページを読んでもう一度考えてみてください。
人工膝関節置換術は痛みを取り除くことに関して言えばすばらしい手術ですが、そのメリットに対してデメリットが大きい手術です。
また、手術をしても痛みが完全になくならない可能性もありますし、手術をしなくても痛みを取り除ける可能性だってあります。
人工膝関節置換術は人工関節を膝関節のなかに入れる手術ですが、あくまでも人工関節は体にとっては異物です。
人工関節には血が巡っていないので、感染症にかかりやすいリスクがあります。
というわけで、今回は人工膝関節置換術の合併症や、術後に気をつけることを解説していきます。
目次
人工膝関節置換術は痛みを取り除く効果はバツグンの手術!だが…
人工膝関節置換術は変形性膝関節症の膝の痛みにより、歩くことも困難な患者に用いられる手術で、傷んだ膝関節を人口の関節に置き換える手術です。
これは、他の変形性膝関節症の手術のなかで痛みを取り除く効果がもっとも高いことが特徴です。
しかし、完全に痛みがなくなるというわけではないので注意してください。
変形性膝関節症の痛みは、すり減って軟骨がなくなった部分で関節の骨と骨とが直接ぶつかって起こる微小骨折によるものです。
人工関節にすると金属でカバーされるので、微小骨折がなくなり、歩き始めの痛みや、体重を乗せたとき、階段の上り下りするときの痛みがなくなります。
ただ、腱や靭帯などの軟部組織の痛みは残り、そして血行も悪くなるので、変な痛みが生じることもあります。
人工膝関節置換術を受ける人の多くは、微小骨折の激痛を知っているので、その痛みから比べると痛みがかなり治まったと感じるようです。
実際、人工膝関節置換術の痛みの改善に対する満足度は99%とかなり高く、実用的な手術であることがうかがえます。
人工膝関節置換術で気をつけたいこと・知っておきたいこと
耐用年数は15~20年で、再手術は難しい
人工膝関節にももちろん耐用年数があり、その耐用年数は15~20年です。
膝に入れた人工膝関節が壊れたり、緩んだりすると再手術をして取り替える必要があるのですが、再手術は最初の手術よりも難しい手術になってしまいます。
そのため、なるべく再手術をしないようにするために、人工膝関節置換術を受けられる人は基本的に65歳以上の人となっています。
人工膝関節の耐用年数を考慮したうえでの年齢なので、人工膝関節の耐用年数が伸びれば、60歳や55歳からでも受けられるようになるかもしれませんね。
また、アメリカの研究報告によると、人工膝関節置換術を受けた後、10年以内に再置換の手術が必要になった人の割合は、約8.2%ほどです。
あなたは大丈夫?人工膝関節置換術を受けられない人・注意が必要な人とは
人工膝関節置換術には、受けられない人や、勧められない人もいるので自分は当てはまっていないかチェックしましょう。
主に以下の項目にあてはまる人は注意が必要です。
1.重い糖尿病、化膿性関節炎
この2つのどちらか、もしくは両方を患っている場合には、人工膝関節を固定することが難しいので、人工膝関節置換術を受けられない可能性が高いです。
2.認知症
認知症の場合は、術後のリハビリについての理解が十分得られない場合があるので、人工膝関節置換術があまり勧められることはありません。
3.副鼻腔炎、虫歯、水虫
人工膝関節は感染症のリスクが高いので、すこしでも感染症を起こす可能性がある原因は治してからでないと受けられません。
化膿しやすい虫歯や水虫などの病気は、感染症の恐れがあるので治しましょう。
4.骨粗しょう症
骨粗しょう症の場合、骨が弱くもろいので、人工膝関節を固定する際に骨が折れてしまう可能性が高いです。
その場合は、手術中にその場で骨折の治療をします。
人工膝関節置換術の合併症で恐ろしいのは感染症!
人工膝関節置換術で、もっとも恐れるべき合併症が感染症です。
本来、肩や膝などの関節に細菌が来たとしても、白血球が食べてしまうので、関節のなかには細菌はいません。
それを人工の膝関節と置きかえるとどうなるでしょうか。
当然ですが人口の膝関節には、血が通っていません。血液がないので白血球もいないので、ばい菌が入ると対応することができずに、ばい菌は好き勝手してしまいます。
そうなると、最悪の場合には骨髄炎となり、足を切断しなければならなくなってしまいます。
ばい菌がついても早いうちに治療をすれば間に合うこともありますが、間に合わなければ人工膝関節を一度手術で取り出さなければ治りません。
厚生労働省の報告によると、こういった人工膝関節置換術を受けた人が感染症にかかった割合は1~2%だということです。
つまり100人が人工膝関節置換術をすると、98人は感染しないが1人か2人が感染症になってしまうということです。
人工膝関節置換術の感染症以外の合併症も注意!
感染症はもっとも気をつけるべき合併症ですが、もちろん感染症以外にも合併症はあります。
しっかりと知って、少しでもリスクを下げましょう!
それでは、人工膝関節置換術の合併症について解説していきます。
1.骨融解により人工関節が緩んでしまう
骨は折れても、栄養をしっかりとっていれば自然とくっついて治りますが、金属で出来ている人工膝関節は代謝することができません。
人工膝関節の素材は、硬いコバルト・クロム合金と、少し柔らかめのチタン・バナジウム合金が使われることが多く、軟骨の代わりとしてその2つの間に入れるのが医療用ポリエチレンです。
このポリエチレンがすり減って出たカスを、白血球の仲間が分解しようとしますが、人工物なので分解できません。
それどころか、分解しようとして出した消化酵素によって自らの骨を溶かしてしまうこともあります。
これが骨融解です。
骨融解が起こると、強く固定されていた人工膝関節が緩んでしまう可能性があります。
2.血栓症は突然死の原因!安静にするよりも動かすことが予防に繋がる
手術中や、術後に長時間足を動かさずにじっとしていると、足の血行が悪くなり、血栓という血の塊ができてしまいます。
この血栓が詰まってしまい、脳梗塞や心筋梗塞を引き起こす恐れがあり、突然死の原因にもなります。
人工膝関節置換術後には、およそ40~50%の患者さんに血栓ができるという報告もあります。
およそ2分の1の確率なので、高い確率といえるでしょう。
これを防ぐには、術後にはできるだけ早く足を動かすリハビリをするなどが効果的です。
痛いからといって、ベッドで安静にしているのがもっとも血栓症のリスクを高めてしまうので注意してください!
3.脂肪塞栓は手術中に起こるかもしれない合併症
人工膝関節置換術の手術中に起こる可能性のある合併症は、死亡の原因にもなる脂肪塞栓です。
脂肪塞栓は、手術の際に骨に付着していた脂肪が、毛細血管に入り、肺などの血管で詰まってしまい、最悪の場合突然死の原因にもなりえる合併症です。
術後に気をつけること
何度も言うように、人工膝関節置換術では感染症につねに気を付ける必要があります。
日常生活においても、感染症になりえることは避けるべきです。
つまり、ケガをした際には場所に関わらずすぐに消毒をしなければなりません。
ケガをしたところからばい菌が入って、まわりまわって関節に行ってしまうことも少なくないからです。
また、転倒にも気をつける必要があります。
転倒した際に、膝関節の周りの骨を折った場合、その骨折を治療することが非常に困難だからです。
術後はこういったことに気をつけながらも、膝を支える筋肉を鍛える運動療法を継続して行いますが、ジョギングやスキーなどの激しいスポーツはできません。
テニスやゴルフなどの人工関節に負担のかからないスポーツなら楽しめます。
それでもあなたは人工膝関節置換術をしたいですか?
手術をしなくても痛みがなくなる可能性はあります。
そして、変形性膝関節症の手術は今すぐにやらなければどうこうなるという病気でもありません。
ならば、少しの間でも痛みを我慢して、保存療法による治療で痛みを取り除くことに挑戦してみてもいいのではないでしょうか。
膝を切って金属でできた人工物を入れるよりも、親から貰い受けたその体の自然治癒力を信じてもいいのではないでしょうか?
人間の体は意外と丈夫にできていて、訓練次第では痛みを取り除くことも可能です。
現在膝の痛みに悩んでいる人、もしくはそのご家族の方はとにかく痛みを取り除きたい、歩けなくなるのではないかと不安にさいなまれていると想像します。
だからこそ手術で手っ取り早く痛みを取り除きことを判断せずに、できることは全てチャレンジして、人工関節は最後の手段としてとっておくべきです。
当サイトではそんな、誰にでもできる保存療法を数多く紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
しかし、人生というのは非常に短いものです。
その人生の晩年期を痛みのせいで家から出ないという過ごし方はしてほしくありません。
手術をするという選択をする場合には、限りなく合併症のリスクを下げて、痛みを取り除いて歩けるようになることだけを考えましょう。
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