変形性膝関節症は基本的に「保存療法」を中心に行いますが、3~6ヶ月続けても膝の痛みが治まらなければ、手術が検討されはじめます。
膝軟骨・または変形性膝関節症の手術法には大きく分けて3つあります。
3種類の手術法は、特徴もやり方も違うので、もしあなたが手術を考えているのなら、メリットやデメリット、入院期間、手術後の過ごし方などをしっかり把握しておくことが大切です。
当然、担当医の方と相談して決めることにはなりますが、事前に知識をもっているのと持っていないのとでは、理解度が違います。
医師もプロですが、そこが弱点となります。プロであるがゆえに、素人の目線になれないこともあるのです。
だからこそ、自分で手術についてある程度学んでおくと、何がわからないかがわかるようになり、それを医師に相談することができます。
そうすれば、より自分のライフスタイルや希望に合わせた手術法を選べます。
もし、自分に合わない手術法を選んでしまうと、最悪の場合、やりたいことができなくなるかもしれません。
というわけで、今回は膝軟骨・変形性膝関節症手術の3つの手術法について解説します。
目次
膝軟骨・変形性膝関節症手術のメリット・デメリット
対象となる重症度と 関節の状態 | 適正年齢 | 期間 | 痛みの改善に 対する満足度 | |
---|---|---|---|---|
関節鏡 視下手術 | ・軽度~中程度 ・問題のある箇所が、関節の内側だけか、外側だけの場合 | 70歳以下 が望ましい | 入院期間 2~7日間 日常生活まで 手術の2~3週間後 | 80% |
高位脛骨 骨切り術 | ・軽度~中程度 ・関節の内側に変性あり(O脚) | 65歳以下 が望ましい | 入院期間 4~8週間 日常生活まで 手術の3~6ヶ月後 | 95% |
人工膝関節 置換術 | ・重度 ・複数の関節に問題あり ・軟骨下骨にも変化あり | 65歳以上 | 入院期間 5~7週間 日常生活まで 手術の2~6ヶ月 | 99% |
膝軟骨・変形性膝関節症で主に行われる手術は以下の3つがあります。
- 関節鏡視下手術
- 高位脛骨骨切り術
- 人工膝関節置換術
それぞれ手術法は全く異なるので、対象となる患者さんや入院期間も変わってきます。
ある程度は、患者さんの希望にそって手術を選ぶことも出来ますが、症状の進行度合いによって目安があるので、それに従って決められることもあります。
それではひとつひとつ見ていきましょう。
関節鏡視下手術
関節鏡視下手術は、膝関節専用の内視鏡を使って行う手術です。
すり減った関節軟骨や傷んだ半月板を取り除いて、膝の痛みを改善します。
皮膚を大きく切るのではなく、膝関節のまわりに小さな穴を開けて行う手術なので、体の負担が少なく傷も目立たちません。
手術は1時間程度で終わります。
早ければ手術の翌日にも退院することができ、長くても1週間程度で退院することができるのが特徴です。
関節鏡視下手術のメリット
- 変形性膝関節症手術のなかで体への負担がもっとも少ない
- 手術の傷あとが小さく目立ちにくい
- 入院とリハビリの期間が短く、日常生活にすぐ戻れる
関節鏡視下手術のデメリット
- 変形性膝関節症が進行している人にはできない
- 手術に適している人が限定的
- 他の手術に比べ、痛みの軽減率が低い
- 手術に対する満足度が8割程度で、他と比べると低い
関節鏡視下手術の手術後
関節鏡視下手術も変形性膝関節症の根本的な解決にはなっておらず、あくまでもこの手術の目的は「痛みを取り除くこと」です。
したがって、手術後も継続してケアすることが大切です。
一般的には、運動療法によって膝を支える筋肉を鍛えて、膝を強くします。
できる範囲から始めますが、手術後の翌日からでも始められるのが特徴です。
高位脛骨骨切り術
高位脛骨骨切り術は、その名の通り、骨を切る手術です。
簡単に言うと、O脚を矯正して、膝関節にかかる負荷の位置を変えて痛みを改善します。
日本人の変形性膝関節症の多くは、膝関節の内側に強い負荷がかかり、O脚になります。
O脚になると、ますます内側の軟骨に負荷がかかり、すり減っていきますので、このO脚を矯正するように骨を切るのが、高位脛骨骨切り術です。
手術は1~2時間程度で終わります。
入院期間は多くの場合約6~8週間程度で、杖をついて退院することになります。
体重をかけて歩けるようになるには、手術後およそ半年ほどの期間が必要です。
高位脛骨骨切り術のメリット
- 人工膝関節置換術と比べると、自分の骨が残るので、痛みなどの知覚が保たれて、膝の無理な使い方を防げる
- 手術後、数十年経っても痛みが再発しない人が多い
- 痛みを自覚しながら、活動的に動ける
高位脛骨骨切り術のデメリット
- 手術後、痛みが治まって、しっかり歩けるようになるまで数ヶ月かかる
- 変形性膝関節症の進行を止められるかは不明
- 膝の可動域の改善はあまり見込めない
- 手術を受けられる条件が限定的
高位脛骨骨切り術の手術後
高位脛骨骨切り術の術後でも、やはり保存療法を継続して行う必要があります。
杖をついて歩けるようになれば退院となりますが、退院後も保存療法を続ける必要はあります。
また、高位脛骨骨切り術は、骨が癒着するまで骨を固定するためのプレートを膝関節に入れるのですが、骨が癒着し、安定するまで約1年かかります。
骨が安定すると、再びプレートを取りだす手術を受ける必要があります。
人工膝関節置換術
人工膝関節置換術は傷んだ膝関節を、人工の膝関節に置き換える手術です。
症状が深刻で、痛みがひどく歩くのも難しい患者さんに適しています。
手術後2日目は車椅子での移動が基本となります。
退院できるのは手術後の4~5週間ほどが目安です。
関節鏡視下手術や高位脛骨骨切り術と比べても、痛みを取り除く効果はもっとも高く、生活の質が大きく上がることが多いです。
ただ、その分気をつけなければならないデメリットもあるので、しっかり知っておきましょう。
人工膝関節置換術のメリット
- 痛みがほぼ無くなるほどで、痛みをとる改善度がもっとも高い
- 手術に対する満足度が99%で高い
- 症状が深刻でも痛みを取り除くことができる
人工膝関節置換術のデメリット
- 耐用年数が15~20年である
- 感染症にかかると最悪の場合、足を切断しなければならない
- 正座など極端に膝を曲げることはできない
(最近は正座ができると言われている人工関節があるが、普及率が1割以下なので実際は難しい)
人工膝関節置換術の手術後
手術後の翌日は機械を使って膝を動かすリハビリをして、2日後には車椅子での移動が可能になります。
その後は立って歩く練習をして、階段の上り下りができるようになったら退院です。
人工膝関節置換術について詳しく解説した記事がありますので、よろしければ参考にしてみてください。
人工膝関節置換術の術後と合併症について!手術はまだ早いかも!
手術をしても痛みがなくならない可能性もあるし、手術をしなくても痛みがなくなる可能性もある
患者さんと親身になって話し合い、ひとりひとりに合った治療法を提案してくれる医師ももちろんいますが、患者さんに親切でない医師もいます。
つまり医師にとっては、患者さんに対して薬を出すか、注射を打つか、手術をした方がお金になることも事実、ということです
しかし現在、変形性膝関節症などの関節の痛みに関する原因は完全に解明されていませんし、変形性膝関節症を根本的に治す治療法も確立されていません。
したがって、手術をしたのに痛みがなくならなかったり、痛みがなくなっても再発することがあります。
対して、手術をしなくても保存療法で痛みがなくなる場合もあります。
例えば、O脚を改善する正しい歩き方を身につけたり、運動療法によって膝を支える筋肉を鍛えたり、減量したりすることによって、膝の痛みが軽減した人もたくさんいます。
だからこそ、手術は最後の手段として考え、手術をする前に保存療法にチャレンジすることが大切です。
手術をすることになった場合でも、自分でしっかり学び、医師と相談し、納得したうで決めましょう。