このページでは、膝の痛みにはどのような治療法が行われているのかをまとめて解説します。
自分でできるものから病院で受けられる治療まであるので、参考にしてみてください。
膝の痛みの原因として、もっとも多いのが変形性膝関節症です。
変形性膝関節症はO脚やスポーツ、体重の増加などによって引き起こされます。
膝の痛みや変形性膝関節症に対する治療法には大きく分けて以下の2つがあります。
- 保存療法
- 手術療法(外科的療法)
保存療法は、手術をしないで治療していくことをいいます。
あまり重症ではない患者に用いられる治療法で、体にメスを入れないので、患者への負担が小さいことが利点です。
保存療法には自分でできるものと、医療機関で受けられるものがあります。
まずは家でできる保存療法から試して、膝の痛みを自分で改善することを心がけてみましょう。
もうひとつの手術療法は、その名の通り手術で治療を行うことをいいます。
症状が重く保存療法を3~6ヶ月間続けても痛みが取れない場合に用いられることが多いです。
体にメスをいれるため、あまり高齢すぎると負担が重くなります。なので、最後の手段と考えましょう。
ではまず、家でできる保存療法から解説していきます。
目次
自分の膝痛は自分で治す!自分でできる保存療法まとめ
膝の痛みを放っておくと、腰や足首まで悪影響を及ぼしかねないので、早め早めに対処していくことが大切です。
自分でできる保存療法は大きく分けて以下の3つがあります。
- 運動療法
- 温熱療法
- 装具療法
では一つひとつ解説していきましょう。
運動療法
運動療法は、名前の通り運動によって痛みを改善する治療法です。
膝の痛みに対する治療法でもっとも大切なのは運動や減量といった、自分で行う保存療法です。
運動療法の目的は、膝を支える筋肉を鍛えて、同時に減量することによって膝への負担をへらすことです。
基本的に3つの運動がありますが、行う順番は
- 筋肉トレーニング
- ストレッチング
- ウォーキング
という順番で行うのが望ましいです。
運動といえばまずはウォーキングやジョギングなどを思い浮かべるかもしれませんが、膝に痛みがある場合は歩くだけでも負担になりかねません。
ですので、まずは膝を支える筋肉を鍛える筋肉トレーニングから始めます。
まずは膝を支える筋肉を鍛え、ストレッチングによって膝の動く範囲を広げていきます。
そして、筋肉を鍛えて減量をし、痛みが軽くなってからウォーキングを始めましょう。
減量
運動療法と同時に行うのが減量です。
体重が膝への負担に大きく関わっているので、減量も忘れずに行います。
いま、日本の食生活が欧米化してきていることも重なり、日本人に肥満が増えてきています。
膝には体重の5~7倍もの負担がかかっているので、膝の痛みを皆瀬するためには減量は欠かせません。
3kg痩せるだけでも実感として楽になることが感じられるので、まずは3kg減量を目標にダイエットをしましょう。
温熱療法
温熱療法は、患部や体自体を温めることによって血の巡りを良くし、痛みを改善する治療法です。
これは手軽に行えるうえに、膝関節の痛みだけではなく、腰痛や肩こりなど、体全体の不調を整えてくれるのでオススメの保存療法です。
ケガやストレス、誤った生活習慣によって蓄積されたダメージを修復しようとして発生する「プロスタグランジン」というホルモンが増加することによって痛みは生まれます。
プロスタグランジンの作用は血の巡りを良くすることなのですが、その結果として「炎症」が起きてしまいます。
このプロスタグランジンの作用を助けるようにして、体を温めると、さらに血の巡りが良くなり、痛みを軽減することができます。
多くの人は逆に湿布などで冷やしてしまいがちですが、これは逆効果なのでやめましょう。
装具療法
装具療法とは、膝への負担を少しでも減らし、痛みを改善するために補助具や装具を使う治療法です。
主に用いられている装具は、足底板と呼ばれるものやサポーター、ブレースなどです。
これも、身に付けるだけで痛みが改善するのでおすすめです。
足底板
聞き慣れないと思いますが、足底板とはO脚を矯正するための補助具です。
膝の痛みの主な原因である変形性膝関節症で悩む人の多くがO脚です。
O脚になると、内側の軟骨ばかりに負担がかかり、すり減ってしまい、痛みが生じます。
足底板の使い方は、足の裏に当てて小指側を底上げすることによってO脚を矯正します。
中敷きタイプのものやサポーター付きで、足に足底板を固定できるタイプのものもあります。
一般的には中敷きタイプの足底板が用いられていますが、サポーター付きの足底板の方が効果が高いとされています。
また、サポーター付きの足底板は、靴を履かなくても使用できるため、室内でも装着できるのも利点です。
サポーター、ブレース
サポーターは、膝の保温を目的に装着します。
また、サポーターを着けることによって、膝関節をより意識的に動かすようになり、安定した歩き方ができるようになるという効果もあると考えられます。
ブレースは、人間工学に基いてつくられた、O脚を矯正する装具です。
見た目がいかついので、女性にはおすすめできませんが、スポーツをしている人などに用いられています。
膝痛を病院でやわらげる!医療機関で受けられる保存療法まとめ
病院で受けられる主な保存療法は以下の3つです。
- 薬物療法
- 物理療法
- 膝に溜まった水を抜く治療
病院で受けられる膝の痛みの治療法は、主に対処療法で、痛みを一時的に抑えるものです。
膝にたまった水を抜いたり、痛みなどの症状をすぐにやわらげられる即効性が利点です。
あくまでも、痛みを一時的に抑えるもので、進行を遅らせたり完全に治すことが目的の治療ではありません。
現段階で、変形性膝関節症などの関節の疾患の根本的な治療をできる治療法はまだみつかっていません。
したがって、病院で受けられる治療は根本的な解決にはならないので、同時に運動や減量など、先ほど紹介した保存療法を継続して続ける必要があります。
では、薬物療法から解説していきます。
薬物療法
非ステロイド性抗炎症剤のまとめ
薬 | 特徴 | 対象者 | 副作用 |
---|---|---|---|
内服薬 | ・広く用いられている ・胃腸薬と一緒に処方される ・胃腸への負担が少ないものが増えている | 胃腸の疾患がない人 | 胃潰瘍 十二指腸潰瘍 肝臓障害 |
外用薬 | ・ 効果は内服薬と同じくらいだが、副作用が少ない ・湿布タイプと塗り薬がある | 胃腸に疾患がある人 | 皮膚のトラブル |
座薬 | ・ 痛みがひどい場合に用いられる | 痛みが我慢できない人 | 胃腸障害 |
薬物療法は、主に非ステロイド性抗炎症剤を用いて痛みを出来るだけ早くとる治療法です。
内服薬と外用薬が主に用いられるが、痛みがひどい場合には座薬が用いられます。
内服薬はまれに胃潰瘍や十二指腸潰瘍、肝臓障害を引き起こすこともあるので、たいていは胃腸薬と一緒に処方されまが、最近は負担の少ないタイプのものが増えています。
関節内注射
関節内注射のまとめ
薬 | 特徴 | 対象者 | 副作用 |
---|---|---|---|
ヒアルロン酸 | ・関節の中にある成分を直接注射する ・関節の動きを滑らかにして痛みを緩和する ・軟骨細胞の増殖を促し、炎症を抑えるとされる | 症状が中程度で、関節の破壊が進みすぎていない場合や、手術を受けられない人 | 膝の腫れやほてり 感染症 |
ステロイド剤 | ・ 痛みがひどい場合に使う | 他の治療法では痛みが治まらなかった人 | 免疫機能の低下 感染症、皮膚萎縮 軟骨の変性 骨がもろくなる |
関節内に直接注射をして、ヒアルロン酸やステロイド剤を注入する関節内注射という薬物療法があります。
ヒアルロン酸は副作用の心配があまりなく、非ステロイド性抗炎症剤と同じくらいの効果を得られるので、現在の関節内注射の主流となっています。
ヒアルロン酸はもともと関節の中にあるのですが、変形性膝関節症などになるとその量が減るので、直接補うために関節内に注射をします。
ステロイド剤は、痛みがひどく膝に水がよく溜まる場合に使用されます。
ステロイド剤の効果は強く、痛みを取り除くには最適ですが、その分副作用が強いので注意が必要です。
物理療法
物理療法とは、患部を温めたり電機を流したりして膝の痛みを緩和し、膝の動きをなめらかにする治療法で、症状が深刻でない場合に用いられれます。
温熱療法
「ホットパック」と呼ばれる温かい温湿布を用いて患部の浅い部分を温める治療法と、「マイクロ波」などを用いて深い部分までじっくり温める治療法があります。
血の巡りを良くすることにより、痛みを緩和できます。
電気療法・光線療法
患部に「低周波の電機」を流したり、「提出力レーザー」や「赤外線」などを照射します。
寒冷療法
患部を冷やして痛みの感覚を鈍らせる治療法です。
イメージとしては、蚊に刺された部分を冷やすようなもので、痛みは抑えられるものの根本的な治療にはなりません。
膝にたまった水を抜く治療
膝に直接注射を刺し、膝にたまった水を抜く治療法です。
一時的にしか効果はなく、また一週間程度で水がたまってしまうのでこれもまた根本的な治療ではありません。
膝の関節が炎症をおこすと、関節液と呼ばれる分泌液を過剰に分泌してしまい、膝に水がたまってしまいます。
強い痛みは生じることはありませんが、膝に重苦しさなどの不快感をもたらし、病気への不安感や恐怖感を煽らせる原因となることが多いです。
膝の痛みの最終手段?! 効果の高い手術療法まとめ
対象となる重症度と 関節の状態 | 適正年齢 | 期間 | 痛みの改善に 対する満足度 | |
---|---|---|---|---|
関節鏡 視下手術 | ・軽度~中程度 ・問題のある箇所が、関節の内側だけか、外側だけの場合 | 70歳以下 が望ましい | 入院期間 2~7日間 日常生活まで 手術の2~3週間後 | 80% |
高位脛骨 骨切り術 | ・軽度~中程度 ・関節の内側に変性あり(O脚) | 65歳以下 が望ましい | 入院期間 4~8週間 日常生活まで 手術の3~6ヶ月後 | 95% |
人工膝関節 置換術 | ・重度 ・複数の関節に問題あり ・軟骨下骨にも変化あり | 65歳以上 | 入院期間 5~7週間 日常生活まで 手術の2~6ヶ月 | 99% |
自分で、または病院で保存療法を3~6ヶ月間行っても痛みが改善されない場合には、最後の手段として手術療法を検討しなければなりません。
もしくは痛みが強く、日常生活に支障をきたすレベルだと手術が選ばれます。
膝の痛みに対する手術療法には主に以下の3つの方法があり、それぞれに特徴があるので、よく考えて選ぶことが大切です。
- 関節鏡視下手術
- 高位脛骨骨切り術
- 人工股関節置換術
まとめ:自分に合った治療法を選ぶことが大切
いかがでしたでしょうか。
膝の痛みにはさまざまな原因があり、さまざまな治療法があります。
その中でお医者さんや、自分の身体と相談して自分に合った治療法を見つけて実践していくことが大切です。
しかし、現在、膝の痛みや変形性膝関節症を根本的に治す治療法は見つかっていません。
根本的な治療というのは、すり減った軟骨を再生させて関節をこすらせずになめらかに動くようにすることです。
筋肉トレーニングや減量などの運動療法、体を温める温熱療法などが副作用の心配もなく、確実に改善できる治療法なのでおすすめです。
しかし、これも軟骨の再生には及びません。
薬物療法は痛みを抑えることに関して言えば、高い効果をあげられますが、深刻な副作用が心配です。
対して、関節サプリメントに含まれる成分として有名なグルコサミンは、深刻な副作用がほぼないうえに、著しい効果をあげているので期待が持てます。
保存療法の一環として、グルコサミンを試してみるのもひとつの手段かもしれません。